射撃
中隊長は全員を舎前に集めて言った。
「秋季演習は終った、これから君たちのやる可きことは何であるか? 言わずと知れた剣術と射撃である」と。
ここは東洋一を誇る実包射撃場である。射程ま三〇〇米と四〇〇米どんなに弾が外れても絶対外に飛び出すことのない仕掛がしてあった。この南山の麓に幾万発の弾が射ち込まれたことだろうか、この一発でもろくも人の命が奪われるとは。
私は剣術は出来なかったけれども、射撃では苦労はしなかった。
背嚢を負うて、五十米後方から走って来て射壇に伏せて、十秒間に五発弾を射つ、そうすると向うの監的壕から、竿の先に黒い星をつけたもので、五発の着弾点が標的の上に指摘される、黒星が横に振られたら五発とも標的に当らなかったことを示す。
的に当らなかったら、サーベルでかちんと頭をたたかれ、李泰院の一本松を駆足で廻って戻る、又射って当らなかったら、又走って丘を馳け上らねばならぬ、射撃の当らない者はそれで泣いておった。
戦闘射撃は漢岳山の麓で行われた、葡匐前進しておると、草むらの中から人形の的が、ちよっ ちよっ と顔を出す、それを見つけてすかさず射つ、これは皆で射つので、個人的制裁はなかった。