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兵営生活の思い出

鶯の谷渡り

 軍隊ではどんなことでも言い訳は許されない、ハイと服従するのみである。斯くてこそ命令一下、水の中、弾の中にも飛こめる人間が出来たりだと思う。

 新兵の靴の手入れが悪いと靴紐をくわえて各班を廻らせられる。二班へ行くと古兵が「ワンと言え」と言う、ワンと言うと靴が落ちる、「お前は天皇陛下の物を落した」と頭をなぐられる、そして三班へ行けと、次々なぐられて廻る。

 被服や寝具の整頓が悪いと、演習から帰って見ると寝台の上に、ひっくり返されてゐる、そして鶯の谷渡りをさせられる。

 「ほうききよ ほうききよ」と言いながら寝台の上にうつ伏せになって寝台から寝台へ渡って班を一巡する。せみ鳴きをせよと言われる、柱や構にぶら下ってミーン ミーンとせみの鳴くまねをする。  大凡そ馬鹿にならぬと出来ないことである。

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